挽いたコーヒーから成分を湯に溶かし出すこと。焙煎した豆はおよそ 30% が可溶で、これが理論上の上限です。ここまで引ききると、あとに残るのは乾いたセルロースだけになります。スペシャルティのフィルター抽出が狙うのは、そのうち実際に引き出す量が18〜22% の範囲。カップが整うのがこの窓です。
18% を下回れば抽出不足。酸っぱく、塩気があり、中身が空洞になります。酸が先に溶け、糖と苦みの成分が追いついてこない状態です。豆の入口だけを味わって、その奥には何もありません。
22% を上回れば過抽出。苦く、乾き、灰のようになります。苦みと渋みの成分は最後に出てくるので、この段階ではそれを引き込んでいることになる。甘い中間層は埋もれてしまいます。
抽出を動かすもの
引き出す量を変えるレバーは5つ。効きの大きい順にだいたいこうです。挽き目(表面積が増えるほど多く出る)、時間(接触が長いほど多く出る)、湯温(高いほど多く出る。上限は 96 °C あたり)、撹拌(かき混ぜる・揺らすと速くなる)、そして水のミネラル(軟らかすぎる水は抽出不足になり、硬い水は味をくすませます)。
抽出は濃さではない
よくある混同です。濃さは濃度——カップのなかで湯 1gあたりに溶けているコーヒーの量。抽出は収率——豆が持っていた質量のうち何パーセントが湯へ移ったか。濃いのに抽出不足のカップも、薄いのによく抽出されたカップも成立します。