質の高い冷たいコーヒーにいちばん早く辿り着く道は、いちばん直感に反する道でもあります。熱い V60 を氷の上に直接落とすのです。喫茶店がアイスコーヒーで受け継いできたやり方で、抽出用のお湯の一部をサーバーに置いた氷に置き換えます。抽出液はいつも通り粉床を通って落ち、氷に触れた瞬間に冷える——揮発しやすい香りが逃げる前に、カップの中へ閉じ込められます。
コールドブリューとの違い
同じ飲みものの二つの形式ではなく、別々の飲みものです。
- コールドブリューは冷たい水で何時間もかけます。熱がないので、明るく揮発しやすい成分は出てきません。酸は低く、チョコレート寄りで、重い一杯になります。
- 急冷式は熱いお湯で短く淹れ、そのあと一気に冷やします。熱が明るさを引き出し、氷がそれを閉じ込めます。熱い V60 が出すはずの花、柑橘、ジューシーさがそのまま残ります。
熱い V60 が好きなら、その同じ豆にいちばん近い冷たい姿が急冷式です。コールドブリューは別の一杯です。
レシピ
1杯分の標準的なレシピです。
- 粉:15g、V60 の挽き目(お湯の量が少ないぶん、いつもよりわずかに細かく)。
- 液体の合計:250g、その内訳は
- 熱湯150g(ケトルに、約94℃)
- 氷100g(抽出を始める前にサーバーへ)
- 比率について:全体で見れば1:16.7(粉15gに対して水と氷で250g)ですが、熱い抽出が見ているのは150gだけ、つまり1:10です。この濃さは意図的なもので、溶けた氷が飲み頃まで薄めてくれます。
淹れ方
- 氷を入れる。100gを量って V60 用のサーバーへ。
- V60 を載せる。氷の入ったサーバーの上にセットします。
- 粉を入れ、スケールをゼロに。
- 蒸らし:熱湯30g(粉の2倍)、30〜45秒。
- 本注ぎ:連続の螺旋かパルスで、熱湯を合計150gまで(蒸らしのあと120g)。1:30あたりで注ぎ終えるのが目安です。
- 落ちきりは2:30ごろ。抽出液はそのまま氷の上に落ち、瞬時に冷えます。
- サーバーを回して、残った氷を溶かし、温度を均します。
- さらに冷たくして飲みたければ、グラスに新しい氷を入れて注ぎます。
うまくいかないとき
- サーバーの氷が足りない:抽出液がぬるいまま落ち、香りを閉じ込められません。思ったより薄く感じます。
- 氷が多すぎる:溶けきらず、一杯が薄まります。目分量ではなく量ってください。
- 氷の置き場所が違う:粉床の上や V60 の中に氷を入れても機能しません。氷はサーバー、つまり抽出の下流にあって、抽出が終わったあとに冷やす必要があります。
- 熱い V60 と同じレシピ:熱い一杯で成立する比率は急冷では成立しません。溶けた氷が薄めるぶん、抽出そのものを濃くしておく必要があります。
こんなときに
暑い日。コールドブリューに回すには「もったいない」シングルオリジンがあるとき。12時間ではなく3分で冷たいコーヒーが欲しいとき。冷たい状態で産地の個性を確かめる方法としても——急冷式のエチオピアは花の香りを保ちますが、同じ袋のコールドブリューは保ちません。
バリエーション
粕谷哲の4:6メソッドは、ひとつ調整すれば急冷式にも移せます。40/60の配分はそのままに、熱湯150gの部分にだけ適用するのです。最初の40%が甘さと酸を決め、最後の60%が濃さを決める構図は変わりません。扱う水量が少ないぶん、注ぎは小さく、より正確に。
出自ははっきりさせておきましょう。粕谷哲が2016年のワールドブリュワーズカップを制したのは、パナマのゲイシャを熱く淹れた4:6メソッドでした。アイスへの応用はその後、コミュニティの側から生まれたものです。うまくいきますが、競技レシピではありません。