コールドブリューは、フィルターコーヒーのいちばんのんびりした親戚です。容器に粉と冷たい(あるいは常温の)水を入れ、12〜24時間放っておいて、漉す。火も、注ぎも、段取りもありません。抽出のレバーは温度ではなく時間になります。
熱をやめると何が変わるか
熱はまず苦味と酸、そして香気成分を溶かし出し、甘さとボディは遅れてついてきます。熱を使わなければ、苦味の多くも一緒に置いていくことになる。残るのは酸が控えめで、なめらかで、チョコレートやナッツに寄った濃縮液です。花や明るい酸——熱いお湯が得意とするもの——はほとんど顔を出しません。複雑なシングルオリジンでも、冷たく淹れると急に口数が減るのはそのためです。
だから日常的にコールドブリューを作る人の多くは中煎りから深煎りを選び、とっておきのエチオピアには手を伸ばしません。
比率と時間、それぞれの役割
- 比率:1:8〜1:5(熱い抽出よりずっと濃い)。薄めて飲む前提の濃縮液で、水や牛乳で半々にするのが標準的な出し方です。
- 時間:冷蔵庫で12〜24時間。深煎りなら短め(8時間)、浅煎りや粗挽きなら長め(24時間)に。
- 挽き目:フレンチプレス並みに粗く。細かいと何時間もかけて出すぎ、避けたかったはずの苦味が戻ってきます。
作り方
瓶に粉と水。全体が濡れるように混ぜます。蓋をして冷蔵庫へ。漉すのは紙フィルター(いちばんクリーン)、クレバー、エアロプレス、フレンチプレス(粉は残りますが許容範囲)のどれでも構いません。
粉は使い回さない。最後の一滴まで搾ろうとしてフィルターを絞らない——苦い微粉がそのまま通り抜けます。そして漉す工程を省かない。濃縮液に残った微粉は抽出を続け、冷蔵庫にある数日のあいだに苦くなります。
水はやはり効く
冷たい抽出だからといって水のミネラルが無関係になるわけではなく、効き目が遅れて出てくるだけです。熱い抽出で平坦に感じる硬水は、コールドブリューでも平坦です。ただ希釈が最初のひと口を覆い隠すので、気づくのが遅れます。V60 に使うのと同じ水を使ってください(テクニックの「水とミネラル」を参照)。水道水で作ったコールドブリューは、たいてい「なめらか」と「なめらかで退屈」の分かれ目になります。
保存
濃縮液は密閉して冷蔵で1〜2週間。薄めたものは3〜4日。それを過ぎると、傷んでいなくても香りが平らになります。
こんなときに
暑い季節。職場。アイスの飲みもの。「コーヒーは苦手」と言うけれど、冷たくて甘いものなら口をつけてくれる人へ。技術で失敗する余地がないので、抽出の入り口としてもいちばん寛容です。