1杯でうまくいくレシピが、2杯でもうまくいくとはかぎりません。計算のうえでは通るはずです——粉を2倍、お湯を2倍、比率は同じ。それでも一杯は通らないと言い、そこには理由があります。
単純な2倍が壊れる理由
粉を2倍にすると、粉床の深さも2倍になります。お湯が通り抜ける粉が増えるということは、
- 同じ流速でも、一滴あたりの接触時間が長くなる。
- 抵抗が増えるので、器具の抜けが遅くなる。
- 熱の損失が増える——大きな粉床はお湯からより多くの熱を奪います。
差し引きで、15gなら2:30のレシピが30gでは3:30になる、ということが起こります。その余分な1分の接触時間が、一杯を抽出の良い場所から苦い側へ押し出しがちです。
増やすときに実際に調整すること
小さな三つの変更で、倍にしたレシピは元と同じように振る舞います。
- 挽き目を一段粗く。 粉床が大きい=抵抗が大きい。粗さで相殺します。粉床が大きいほど、この効きは強くなります。
- 器具をひとサイズ上げる(持っていれば)。 30gなら V60 の01から02へ。大きいほうは粉床の面積が広く、深さの影響を打ち消します。
- 速く注ぐ。 深い粉床に対して総水量が増えるぶん、流れを止めないこと。遅い注ぎは停滞します。
大きい器具がなく、小さいほうで倍量を淹れるなら、続けて2回淹れて合わせるほうが良い結果になります。1杯目がまだ温かいうちに2杯目が追いつきます。
減らすとき
逆方向はたいてい簡単です。18gから12gは、18gから36gよりずっと寛容です。粉床が浅く、水が速く動くので、
- 挽きを細くして接触時間を保ちます。
- 2:30ではなく1:30で抜けそうなら、注ぎを遅くします。
- 熱の損失により注意を。水が少ないぶん、浅い粉床の上で早く冷えます。
計算がどうしても通らないとき
まったくスケールしない淹れ方もあります。いちばん分かりやすいのはコールドブリューで、1:8では変数が流れではなく接触時間なので倍にしても通ります。一方フレンチプレスでは、倍にするとプランジャーの行程が深くなり、押すのがずっと重くなる。一杯は粉っぽくなります。
ハンドドリップでは、2倍(15g→30g)を超えたあたりから、レシピを引き伸ばすより別の器具を求める話になります。それは失敗ではありません。大きいケメックスが存在する理由です。
出発点になる表
| 元 | 2倍 | 変えるところ |
|---|---|---|
| 粉15g、V60 01 | 30g、V60 02 | 器具を大きく、挽きを一段粗く |
| 18g、カリタ155 | 36g、カリタ185 | 器具を大きく、挽きを一段粗く |
| エアロプレス12g | エアロプレス18g | 同じ器具、挽きを一段細く(筒形なので粉床の深さは思ったほど増えない) |
| コールドブリュー200g | コールドブリュー400g | レシピはそのまま、1:8が線形に成り立つ |