湯がどう粉床に入るかで、レシピの半分は決まります。同じ豆、同じ挽き目、同じ比率でも、注ぎ方を3通り変えれば3通りのカップになります。
迷ったら「の」の字
中心から外へ向かうゆっくりした円を、フィルターの縁の手前で止めます。どの粒子も同じように湯と出会います。再現しやすく、バランスがよく、ハンドドリップのレシピの多くが前提にしている注ぎ方です。どうすればいいかわからないときは、らせんで注いでください。
中心一点が効くとき
真ん中に注ぎ続けると、湯は速く抜け、外周の抽出は控えめになります。カップは軽く、繊細に仕上がります。密度の高い豆で、少し力を抜きたいときに使えます。
パルスが報われるとき
短い注ぎと休みを繰り返します。パルスとパルスのあいだに湯が抜けきるので、香りが立ち、甘さが持ち上がります。時間はかかりますが失敗しにくく、丁寧なタイミングにきちんと応えます。粕谷哲の4:6メソッドが代表例です。
避けること
フィルターの壁に注ぐこと、跳ねるほど速く注ぐこと。どちらも湯が粉床を バイパス することにつながります。チャネリングが起き、抽出はムラになり、理由が誰にもわからないまま濁った味になります。
ペーパーをリンスするかどうか
意見は二つに割れます。伝統的な立場は、粉を入れる前に湯でペーパーをすすぐこと。フィルターを器具に密着させるためと、紙の味を落とすためです。ミニマリスト側の立場(Hoffmann)は、現代のペーパーはほとんど紙の味がしないし、器具を温めておけばリンスなしでも密着は同じように得られる、無駄が少ない、というものです。
実務としては、ケメックス はリンスします(ペーパーが実際に厚く、味に出ます)。V60、カリタ、Origami では任意です。手持ちのペーパーで両方試して決めてください。密着の効果はどちらにせよ本物で、味への効果はごくわずかです。