多くの人は豆を一度飲み、それがどういう豆かを決めて、二度と戻りません。そうやって舌は固まっていきます。飲み直すこと——同じ豆に一週間のうちで二度、三度戻ること——が、その豆を本当に知る方法です。
一杯では足りない理由
コーヒーは焙煎後の休ませ方で変わります。4日目に飲んだ袋は、14日目の袋とは別物です。浅煎りは焙煎から10〜21日で頂点を迎えることが多く、中煎りはもっと早く動きます。5日目に一度飲んで「薄くて青くさい」と決めたなら、味わっていたのは豆そのものではなく、休ませ不足かもしれません。
舌のほうも動きます。どんな豆でも、最初のひと口が次のひと口の下地になります。冷めた状態で「強烈な柑橘」だったものが、しばらく付き合うと「均整の取れた柑橘」になる。1時間あけて飲んだ2杯は、同じ抽出について意見が食い違うことがよくあります。
飲み直しの手順
- 同じ豆を、同じレシピで、一週間に二度淹れる。 1日目と、5〜7日目。あいだでレシピは変えません。
- どちらもメモを取る。 3語か4語で十分です——ボディ、酸、甘さ、余韻。考え込まないこと。
- 二度目のあと、メモを並べて比べる。 同じところは。違うところは。酸は落ちたか、ボディは増したか、甘さは出てきたか。
- レシピを変えるかどうか決める。 変えるなら一つだけ——挽き目、比率、温度のどれか。同時に二つは触りません。
これで一周です。学びのほとんどは3で起きます。1日目の語彙が7日目に合わないと気づく瞬間、それが舌の較正です。
何を書くか
メモは短く、具体的に。「うまい」「まろやか」は次に活きないので飛ばします。役に立つのは、
- 酸(1〜5):クエン酸的、リンゴ酸的、鋭い、柔らかい。舌のどこで感じたか。
- ボディ(1〜5):紅茶のよう、シロップ的、水っぽい、油っぽい。
- 余韻(短い/中くらい/長い、乾く/甘い/苦い)。
- ひとつだけ形容:何を思い出させるか。「古い図書館」でも構いません。それはノイズではなく信号です。
飲み直しが変更を促すとき
二回とも酸っぱいと言うなら → 細く挽くか、時間を延ばします(レバーの理屈は基礎編にあります)。
二回とも苦いと言うなら → 粗くするか、短くします。あるいは水を確認してください。もったりした苦味はたいてい水由来です。
二回が食い違うなら(1日目は酸っぱい、5日目は苦い)→ 袋の中で豆が速く動いています。小分け冷凍を試すか、小さい袋で買うか。レシピは正しくて、動いているのは豆のほうかもしれません。